最近、円安のニュースを耳にしたことがある人もいるでしょう。
そこで今回は、なぜ円安が進んでいるのか、円安が進むとどうなるのか、そして、この「円安市場」を生き抜くために私達にできることは何なのかを解説していきます。
目次
【1】なぜ円安が進んでいるのか?
最近になって円安が加速度的に進んだ理由を一言でいうと、アメリカが日本とは真逆の方向へ金融政策の舵を切ったためです。
1-1日本の金融政策
日本では2013年から景気回復を目的として金融緩和政策が取られています。
それも金融緩和政策の一環です。
金利が下がると、金融機関は、低い金利で資金を調達できるようになり、企業や個人への貸出においても、金利を引き下げられます。
これにより、企業は運転資金や設備資金を調達しやすくなります。
個人においても、住宅や車などのローンが組みやすくなります。
こうして、経済活動が活発となり、景気回復が図られるわけです。
その通りです。
しかし日銀はまだ完全な景気回復には至っていないとし、当面この金融政策を続けるとしています。
1-1-1「良いインフレ」と「悪いインフレ」
金融緩和政策で市場にお金が増え、景気が良くなるにつれ物価は上がっていきます。
物価が上がっても、景気が良くなり、収入も上がっているため、そこまで市民生活に影響がないため、これは「良いインフレ」と呼ばれます。
一方、戦争による輸入品や原材料の値上がりなど外敵要因で物価が上がる、景気回復を伴わないインフレを「悪いインフレ」と呼びます。
もちろん、日本は「良いインフレ」を目指して金融緩和をしているわけですが、近年の国際状況に伴い、「悪いインフレ」に直面しつつあります。
1-2アメリカの金融政策の転換
アメリカにおいてもコロナ禍などで景気が沈んだため、2020年から金融緩和政策がとられてきました。
しかしコロナ禍が収まり、景気が回復し始め、それに伴う物価上昇を受け、米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和から一転、金融引き締めである0.75%の利上げを決めました。
1-3米利上げが円安を加速させる
日銀は金融緩和政策により、デフレを脱却し、インフレ率2%を目指しています。
その目標はまだ達成されていませんが、インフレは物価が上がることですから、これは言い換えると相対的な円の価値は下がっていると言えます。
翻って、アメリカは金利を上げ、物価上昇を抑えようとしています。
利上げはともすると景気に水を差しかねません。
ですから利上げをするということは、他国に対し、利上げに耐えられるだけ自国の経済が堅調であることのアピールになります。
その結果、ドル建て資産に対する需要が拡大し、円/ドル相場では円安・ドル高に振れやすくなります。
金融引き締めにより、金利を上げ、自国通貨の相対的価値を上げにかかったアメリカと、景気が回復せず、金融緩和を続ける日本、今回の加速度的な円安の進行は、日米における真逆の金融政策が影響しているのです。
【2】なぜ日本の金融緩和政策は奏功しないのか
ではなぜ、アメリカと同じように金融緩和をしながら、日本の経済は復調しないのでしょうか。
その理由は日本社会の構造的な問題が絡み合っているとされていますが、その中でも以下の3点が挙げられます。
➀日本企業の海外移転
90年代以降、日本の製造業はなかなか他国と差別化する高付加価値製品を生み出せず、結果、韓国や台湾、中国など新興国との価格競争に巻き込まれました。
その結果、コスト対策から生産設備などの拠点を海外へ移す動きが加速しました。
これにより、物を作るのも売るのも海外という企業が増え、国内の経済規模が縮小してしまいました。
金融緩和で円安になることのメリットは輸出が増えることです。
それにより、企業の業績が上がり、国内の景気が良くなっていくという好循環が期待できます。
しかし、海外で作って売るという、「地産地消」が進んだことにより、輸出量の伸びも限定的になり、力強い景気回復の好循環を生み出せずにいます。
➁輸入品の価格上昇
➀で述べたように、輸出による利益が限定的なことに加え、円安のデメリットである、輸入品の価格上昇の影響はもろに受けているのが日本です。
原材料を輸入品に頼っている企業も多く、輸入品の価格上昇は企業のコスト増に繋がり、これでは社員の給与も上がりません。
いくら金融緩和をしても、実際に給与が上がり、景気回復を実感できなければ個人消費は増えません。
➂ローカル企業の衰退
➀で日本企業の海外進出の動きをお伝えしましたが、日本のGDPの大半を占めるのは国内や地方市場における、小売業・サービス業などのローカル企業です。
ですからローカル企業が元気であれば日本の景気はある程度保たれるわけです。
しかし、このローカル企業の生産性が日本は低いのです。
原因は商品に付加価値を生み出せないことや、少子化による人手不足、昔ながらの非効率な仕事の進め方により余計なコストがかかっていることなどが挙げられます。
これらは金融緩和でどうにかなる問題ではありません。
【3】円安市場を生き抜くために
金融緩和と米利上げによる円安は当面続くでしょう。
こうした円の価値が下がっているフェーズにおいて、自分の資産を守るために外貨建ての資産を持つのも1つの手です。
外国株式に手を出すのがハードルが高ければ、ただ貯めておいても価値が目減りしていく可能性のある預金を円建ての投資に回してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回は円安の動きとその原因や影響についてお伝えしました。
まずはこうした経済の動きに関心を持ち、自分の生活とどう関わってくるのかを知ることが大切です。
今回の記事が、そうした日本経済を考えるきっかけになれば幸いです。