大学時代に奨学金を利用していた人もいるでしょう。
しかし、奨学金は借りているお金ですから、大学を卒業し、収入を得るようになったら返さなくてはなりません。
ここから、“ツール・ド・奨学金完済”という長い旅が始まります。
実際、奨学金完済までには長い期間が必要となり、完走するのは“ツール・ド・フランス”並に大変です。
しかも、大変だからといって途中で投げ出すことはできません。
そうですね。
ですから、そうした時にどうすればいいのか、また、払わなかったらどうなってしまうのかなど、今回は奨学金ローンについて解説していきます。
目次
1 奨学金の総額と完済期間
大学在学中に毎月8万円を第二種奨学金(利子付き奨学金)で借りていたとすると、4年間で384万円、利子を含めると400万円程になります。
利子のつかない第一種奨学金であっても400万近い金額であることに変わりありません。
そうですよね。
人によって金額は異なりますが、奨学金を利用していた人は、社会人1年目から100万円以上の奨学金返済という借金を負うことになるのです。
経済的に苦しい学生を助ける目的の奨学金が、結果的に本人を苦しめることになっているのだとしたら、皮肉なことです。
2020年に給付型奨学金の対象が拡大されましたが、より広い学生への適用が望まれます。
さて、この400万円をどう返済していくかですが、奨学金の月々の返済額の平均は16000円〜17000円とされています。
この額で返済していくと、完済まで20年かかることになり、新卒の22歳から返済を始め、滞りなく払い続けたとしても、払い終わるのは40歳過ぎです。
もちろん、一括返済は可能ですが、そのためにはある程度まとまった金額を用意する必要があり、それもまた大変です。
2 奨学金を返せない時の対処法
経済的な理由などで奨学金の返還が難しくなった時に取るべき方策についてお伝えします。
2-1減額・返還猶予申請を行う
日本学生支援機構へ以下の申請をし、月々の支払額を下げてもらうか、一時的に支払いをストップしてもらいましょう。
➀減額返還
毎月の返済金額を最大で15年間、1/2~1/3にできます
➁返還期限猶予
一定期間(最長10年)返還を先送りできます。
2-1-1申請に必要な書類
申請書は日本学生支援機構のHPからダウンロードできますが、申請には妥当な理由と、その理由を証明する書類が必要です。
➀ケガ・病気
・発行2カ月以内の診断書
➁生活保護受給中
・生活保護受給証明書
➂失業
・雇用保険受給資格者証(求職活動記録面も含む)
・離職票
・被保険者資格喪失確認通知書のコピーのいずれか
➃経済困難
・最新の所得証明書
・市県民税(所得・課税)証明書
・当該年度の住民税非課税証明書
(マイナンバーを提出すれば証明書の提出は不要)
➄災害
・➃経済困難と同様、あるいは罹災証明書
⑥産前産後・育児休業
・➃経済困難と同様、あるいは休業証明書
2-1-2経済困難が認められる収入について
上の項目の➃「経済困難」については、申請が許可される具体的な収入が定められており、減額返還と、返還期限猶予でそれぞれ下記のように異なります。
【減額返還】 【返還期限猶予】
給与所得 給与所得
年間収入325万円以下 年間収入300万円以下
ここで重要なことは、減額も返還猶予も、返還すべき奨学金の総額自体が減っているわけではなく、あくまで一時的な措置であるという点です。
2-2奨学金支援制度を利用する
2-2-1各自治体による支援
各都道府県・市町村では人材確保を目的として、奨学金返済の支援制度を設けています。
対象地域の特定の職種、提携企業に就職すると、奨学金の一部、あるいは全額を助成してもらえます。
同制度は三重県でも、実施されていますので、興味のある方は下記リンクから確認ください。
三重県|高等教育機関との連携:三重県地域と若者の未来を拓く学生奨学金返還支援事業(令和3年度第2次募集) (mie.lg.jp)
2-2-2介護職・技術職に対する支援
慢性的に人手不足である介護職では、同職への就職希望者などに対し、奨学金返還相当額を支給しています。
また、人材育成の観点から、建設・IT分野における中小企業の技術者に対しても、奨学金返還相当額を3年間支給しています。
2-3支援団体に相談をする
どうしても返済が難しく、自分ではどうしようもない場合は、一度支援団体に相談してみましょう。
相談先としては、若者の労働や貧困問題の解決に取り組んいる、NPO法人POSSE(ポッセ)などがあります。
3 返済を滞納するとどうなるのか
2章で述べた救済措置などの申請もせず、支払いを滞納すると、次のような通知が本人、あるいは連帯保証人(保証人)に届きます。
➀滞納10日前後
本人あてに督促の電話がかかってくる
➁滞納2週間前後
本人あてに「奨学金返還の振替不能通知」が届く
連帯保証人・保証人あてに「奨学金の返還について」が届く
➂滞納20日前後
本人あてに「個人信用情報機関への登録について」が届く
連帯保証人は通常、両親であることが多いため、滞納が親にバレることになります。
さらに➂「個人信用情報機関への登録」とはいわゆる、ブラックリストに載ることを指します。
通知が届いた時点ではまだ登録されませんが、滞納が3ヶ月を超えると実際に登録され、奨学金を返済してからさらに5年が経たないと削除されません。
その間、ローンが組めないことになります。
また、奨学金は利子が高くないので、それほど高額にはなりませんが、延滞金も追加されます。
3-1督促の通知を無視するとどうなるか
➀残金の一括請求がされる
前項でお伝えした、各種、督促通知も無視すると、「支払い能力があるにも関わらず、支払いを行っていない」と見なされ、残高の一括請求が本人と連帯保証人へなされます。
そう見なされないためにも、支払えない時は、申請が必要です。
なお、連帯保証人ではなく、保証機関を利用している場合は、保証機関へ請求がいき、保証機関が代わりに支払いますが、後日、保証機関より本人へ請求がいきます。
➁強制執行による給与差し押さえなどが行われる
一括請求も無視すると、最終的に強制執行による給与などの差し押さえが行われます。
本人が無職で給与の差し押さえができない場合は、連帯保証人の給与が差し押さえられます。
なお、給与差し押さえになった場合、裁判所から職場へ連絡がいきますので、「返済を滞納し、差し押さえになった」ことが職場にもバレます。
まとめ
奨学金は本人が亡くなった場合や、重度の障害を負った場合などを除いて、基本的に免除されません。
だからこそ、完済する意思をしっかり持ち、払えない時は適切な処置を講ずることが必要です。
返済はキツイですが、そこから逃げるとドムくんの言うように、さらにキツいことになるのを、肝に銘じておきましょう。