新しく仕事を始めたときに働く条件が書かれた書類を貰いましたか?
貰ったとしてもほとんど記憶にない、どこに行ってしまったか記憶にないという人は少なくありません。
大切なものなのだろうとわかっちゃいても、いまいちピンと来ない労働条件通知書や雇用契約書について学んでいきましょう!
目次
会社で働くことは契約関係
会社で働くことは契約の一つ。
でも「どんな契約ですか?」と聞かれると、上手く説明できないのではないでしょうか?
正解は、「雇用契約」です!
雇用契約の根拠である民法623条にはこのように書かれています。
「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」
労働基準法や労働契約法が元じゃないの⁉と思うかもしれませんが、実はより細かい事項を定めた「民法の特別法」という扱いになっています。
雇用契約も民法での契約なので物を売ったり、お金を払って物を貸し借りしたりする時と同じルールが使われているんです!
- 書面がなくてもお互いの意思表示だけで契約は成立する。
- お互いに何かしらの対価を渡す必要がある(例:労働と賃金、商品と代金の関係)
- 契約内容をお互いの合意があれば、法律の範囲内で自由に決めることができる。
労働条件通知書を貰っていますか?
労働条件通知書と雇用契約書の違い
物の売買と雇用契約は同じルールと聞いても、現実は違うように感じますよね?
これは雇用契約が雇用する側(会社)が強い力を持っているので、労働者を守る必要があるからです。
労働基準法などは民法の「お互いが対等である」を現実に合わせて修正してくれているんです♪
例えば、書面がなくても雇用契約を結ぶことができることを会社が悪用して、どんどん労働条件を悪くしてしまうかもしれません。
家を買うときなど大きな契約をするときはあらかじめ契約書を作成しますが、会社は有利な立場を利用してウヤムヤにすることもできます。
そこで法律で「労働条件通知書」を労働者に渡すことが法律で義務付けられ、交付しないと罰則があります。
労働条件通知書を渡さないと会社は労働基準監督署に指導されることも…(汗)
よく似たもので雇用契約書があります。
雇用契約書は互いに契約内容を明確にするためのもので義務ではありません。
会社側から一方的に渡される労働条件通知書と比べると違いがよく分かりますよね!
労働条件通知書はいつ貰えるの?
一番遅ければ入社日かも?
労働基準法では「使用者が労働者を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません」と定めています。
これはハローワークなどでの募集内容の幅が広いのも理由です。
例えば基本給20万円~40万円(経験に応じる)では、自分の場合はいくらか分かりませんよね。
そこで労働条件を改めて伝えるために使われるのが労働条件通知書です。
労働条件通知書の通知は、法律上は「雇入れ時」。
つまり「入社日の就業開始時」までに労働者に渡されればOKなんです!
とはいえ、入社日までに働く条件が分からないというのは新卒採用やアルバイト以外ではあまり現実的ではありません…。
一般的には会社が内定を出した後に労働条件通知書を提示し、労働者が承諾すれば雇用契約が成立する流れとなります。
さらに互いの意思を確認するために雇用契約書を取り交わすこともあります。
実務的には労働条件通知書と雇用契約を兼ねる会社も少なくありません。
その場合は内定を出した後、会社側は労働条件通知書と雇用契約書を兼ねた書類を労働者に2枚渡します。
2枚とも記載内容は全く同じで1枚は労働者側が保存します。
労働者がもう1枚に署名(捺印)して会社側に提出することで互いの意思を確認できるようにすることもあります。
電子メールやSNSでも労働条件の明示はできる
労働条件の明示は書面での交付に限られてきましたが、平成31年4月1日から労働者が希望した場合は電子メール、SNS(LINEやフェイスブックなど)、FAXでも交付が可能となりました。
電子メールなどで明示を希望するときにはメールなどあとで確認できるものではっきりと伝えましょう。
電子メールで受け取ったデータは印刷をするなど、数年後でも確認できるように保存も忘れてはいけません!
SMS(ショートメールサービス)でも禁じられてはいませんが、文字数制限がありデータも添付できないので望ましくはありません。
会社側からSMSで送られてくる場合は別の方法に変えてもらうように依頼するのもよいでしょう。
労働条件通知書や雇用契約書には書かれていることは?
労働条件通知書や雇用契約書には必ず記載しなければならない絶対的記載事項と、必要であれば記載する「相対的明示事項」に分かれています。
絶対的記載事項
- 労働契約の期間
- 雇用期間に定めのある労働契約を更新する場合の基準
- 就業場所と従事すべき業務に関する事項
- 始業と就業の時刻、残業の有無、休憩、休日など
- 賃金(退職手当やボーナス除く)
- 退職や解雇に関する事項
- 昇給に関する事項
短時間労働者(パートやアルバイトなど)にはさらに追加記載があります。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- ボーナスの有無
- 相談窓口
相対的記載事項
- 退職手当が適用される労働者の範囲、計算方法など
- 臨時に支払われる賃金、ボーナスに関する事項
- 労働者が負担する食費や作業用品に関する事項
- 安全や衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 労災補償や業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰や制裁に関する事項
- 休職に関する事項
労働条件通知書や雇用契約書はどんな使い道があるの?
労働条件を明示した以上、その内容に会社も労働者もしばられることになります。
ですが、有利な立場である会社側が一方的に条件を変更してくるケースもあります(汗)
会社の違法などを証明することができる
会社側が違法行為などを行ったときには行政機関に相談することができます。
そのうちの1つが取締りの権限も持っている「労働基準監督署」です。
しかし、いくら大変な目にあっていると言っても証拠がなければ、アドバイスはしてくれても指導や取締りまではしてくれません。
そこで証拠となるのが労働条件通知書や雇用契約書です。
賃金が支払われていない、計算の方法がおかしい、休日の取扱いなどを給与明細や就業規則と照らし合わせれば説得力アップ!
証拠力が高ければすぐに担当官が会社側に電話をしてくれることもありますよ。
労働者性を証明する1つにもなる
自分が会社の労働者であると証明することもできます。
例えば会社の従業員だと思っていたのに業務委託など外注業者扱いにされていたり、管理職ということに名前だけされて残業代が支払わなかったりするような場合です(汗)
その他にも、親族が経営している会社で従業員として働いていると、血縁があることを理由に経営側ではないかと疑われることがあります。
労働条件通知書や雇用契約書は社会保険や雇用保険に加入する際の資料となることもあります。
一方的に働く環境を変えることを防げる
入社したあとに「就業規則が変わったので入社時の約束はなかったことに」なんていうことは実はよくあることです。
ですが、就業規則はベースとなる基準でしかありません。
就業規則よりも良い条件の雇用契約がされていればそちらが優先されます。
例えば就業規則には転勤を命ずる旨の規程があったとしても、雇用契約書には「転勤の可能性 無し」と記載されていれば会社側は転勤を命ずることはできません!
まとめ
労働条件通知書を交付するのは会社の義務ですが、会社側から労働者に一方的に通知されるものです。
雇用契約書は義務ではありませんが会社と労働者が合意した形になるのでトラブルを防ぐことができます!
会社とトラブルが起きたときに自分が正しいことを証明する大事なものです。
労働条件通知書や雇用契約書が無いというだけで、行政機関から労働者と認めてもらえず失業保険や税金の免除などが受けられないことも…。
いざというときのためにも必ず手に入れて大切に保存しておきましょう!