遺言というと高齢者やお金持ちだけで現役世代には関係ないと感じますよね。
私たちにとって遺言は無関係ではありません!
遺言を残すために必要な作業はトラブル防止になり
家族でのコミュニケーションも充実する機会にもなります。
目次
遺言の読み方は「いごん」
一般的に「ゆいごん」と読まれますが、法律上は「いごん」という読み方が正解です!
現役世代は遺言を相続人(財産を貰う側)としての立場で考えてしまいまよね…。
本当は被相続人(財産を死後に渡す側)のためのものです。
法律の世界では、亡くなると権利を失い保護されなくなってしまいます。
その人がもう存在しなければ、亡くなった人の財産は好きにしてよいとも言えます。
ですが、遺言は例外的に亡くなっているのに、その人の意思を「有効」にするのです。
遺言は死後に家族以外のお世話になった人に財産を渡したい、慈善団体に寄付をしたい、妻には一緒に住んだ家に住み続けられるようにしたい…。
そんな亡くなった人の気持ちを実現するための仕組みです。
お金持ちほど遺言は残さない
遺言は財産がたくさんある人が残すものだと思っていませんか?
実は財産がある人は弁護士など専門家に相談して生前に処分してしまい、ほとんど遺言は使われず、使っても内容も最小限のものです。
逆に一般的な人ほど遺言は活用しやすい仕組みと言われています。
遺言のメリットとは?
日本人は親子間でお金の話をほとんどしませんよね?
日本の金融教育が遅れていると言われる理由でもあります。
親が高齢になって体力が衰えたとしても、お金の話を改まってすることは少ないでしょう。
親が亡くなり、いざ相続となったときに初めて親の財産を知り、誰が相続するかなどの課題に直面します。
ですが、遺言があれば家族間での争いを最小限に抑えるだけでなく、亡くなった後の事務的な負担を大きく減らすこともできます。
遺言は「お葬式の後に突然発見されるもの」と思っている人もいますが、生前に家族で話し合いながら内容をまとめて遺言として残すこともできます。
遺言を書いてみませんか?
遺言は15歳に達していれば残すことができます。
自分の死後の希望をまとめるためのツールとして書店などでも販売されている「エンディングノート」がオススメ。
正式な遺言ではありませんが、現役世代でもエンディングノートに書かれていることはもしもの時の助けとなるでしょう。
例えば、たった今、自分が心臓発作で亡くなったと想像してみてください。
あなたの銀行預金、株式、高価なアイテム、趣味で集めているもの、こっそり貸し借りしているお金など、家族は知ることができるでしょうか?
各サービスのIDやパスワード、重要な情報が記録されたパソコンやスマホへのアクセス方法も分かりませんよね。
家族が見つけ出すことができても、残された品をどう処分してよいか迷うのではないでしょうか?
まずは財産と情報を整理して、家族が分かるようにしておく必要があります。
このように遺言を作るノウハウは現役世代にも「備え」として活用できるのです。
遺言ってどんなものがある?
遺言の欠点は「改ざん」されるおそれがあること。
そこでリスクを下げるために、3つのルールを用意しています。
いずれも要式を守らないと無効になってしまうのが特徴です。
また、それぞれメリット・デメリットと注意点があります。
自筆証書遺言
最大のメリットは最も簡単で費用もかからないこと。
ですが自分で全文を書く必要があり代筆も許されません。
自筆は「手書き」を意味するので、パソコンで作成が許されるのは財産目録のみです。
遺言は最後に残されたものが原則有効です。
なので、日付が無かったり「吉日」のような書き方は無効になってしまいます…(涙)
自筆証書遺言の一番のデメリットは信用度が低いことです。
そのため開封するには家庭裁判所の検認というステップが必須。
遺言は本人が保存するので存在を誰かに知らせておく必要もあります。
対策として、紛失防止に法務局に保管してもらうという制度も存在しています。
公正証書遺言
公正証書遺言のメリットは証拠力の高さです。
公証役場と呼ばれる行政機関で「公証人」が遺言を筆記して、公証役場にも内容が残されます。
公証人以外に証人も2人立ち会う厳重っぷり!
公証人が筆記するので文字が書けなくても残せますし、家庭裁判所の検認もいりません。
デメリットとしては手間と費用がかかることで、基本手数料だけで数万円もかかることも!
さらに内容を他人に知られてしまうので中身を絶対に秘密にするということはできません…。
秘密証書遺言
自筆証書遺言と公正証書遺言のハイブリッドが秘密証書遺言です。
遺言の内容は秘密にしておきたいけど、遺言の存在は公証役場に記録しておきたい場合に使われます。
秘密証書遺言ではパソコンで作成も許され、日付の記入も必要ありません。
他人に作成して貰うことも許されています。
信用度を高めるために、遺言が入った封筒に封をしたら公証人1人と証人2人の前で「自分の遺言である」と述べる必要があります。
さらに公証人と証人が封筒に署名と押印をします。
内容は秘密なので開封するには、家庭裁判所の検認も必須です!
便利な秘密証書遺言ですが一律で基本手数料が11,000円かかります。
遺言書そのものは本人が保存するので改ざんはなくても「紛失」してしまい、内容を知ることができない可能性は充分にあります…。
遺言の全部が有効になるわけではない
残された配偶者、子ども、直系尊属には「遺留分侵害額請求権」があります。
亡くなった人の意思によってもコントロールできないもので、相続人の生活保障のために一定額を保証するものです。
たとえば愛人に全財産2,000万円を相続させようとしても、1/2(直系尊属のみなら1/3)の1,000万円しか渡すことはできません…。
まとめ
遺言は万が一のときにトラブル防止になり、作成する過程で家族とのコミュニケーションを深める機会になります。
遺言は形式をしっかり守らないと無効になってしまうリスクもあり慎重さが必要ですが、今から準備しておくことでIDやパスワードの整理など、
死亡時だけではない「もしもの備え」になりますよ♪