通勤中であっても事故や病気にかかった場合は労災保険を使うことができます。
通勤でもっとも大変なのは交通事故の場合です。
車と自転車、車と車の事故はこすった程度でも打ち身なのでダメージが残ることが多くあります。
いざ事故が起きたときにはパニックになって正確な判断ができなくなってしまいますよね。
目次
まずは事故の処理から!
事故が起きたら自分の身のことを心配しましょう。
もし自分が加害者であればすぐに相手の救護をしないと「救護処置義務」という重い罪となります。
もし相手が軽症に見えたとしても警察に通報をする義務があります。
こんな事例もあります。
朝、横断歩道を渡っている人をはねてしまったAさん。
相手が「ちょっと擦りむいただけ。自宅まで送って欲しい」と言われたので、警察に通報はせずに自宅まで送り届けました。
相手は元気そうだったのでAさんは一安心。
夜になってAさんが相手の自宅に訪れると死亡していました。
結果、Aさんは救護処置義務違反、過失致死罪、ひき逃げの疑いで逮捕されてしまったのです。
病院で治療や検査をしよう!
病院には労災保険指定医療機関とそうでない医療機関があります。
どちらでも労災保険を利用することはできますが労災保険指定医療機関のほうが手続はスムーズ。
インターネットで簡単に確認ができるので選ぶ余裕があるなら労災保険指定医療機関にしましょう。
いざ、事故でケガをして病院に行ったときに「労災ですか?」と聞かれるかもしれません。
通勤も労災になることを忘れていたり、気が動転していたりすると迷ってしまいますよね。
そんなときはどちらでも構いません、
もし手持ちのお金が無いようなら労災にしておけば、労災保険指定医療機関であれば医療費を支払わずに済むでしょう。
会社と保険会社に報告する
自分自身が緊急搬送など大きなケガがなく、事故直後の救護処置などが落ち着いたなら、ひとまず会社に連絡をしましょう。
状況によっては適切なアドバイスや指示を得られるかもしれません。
会社や保険会社の担当者がとっさに知りたい情報を確認しましょう。
- 自社従業員のケガの具合
- 相手のケガの具合
- どちらの過失が大きいのか
- 発生した日時
- 従業員が利用する医療機関の名称、住所、電話番号、代表者名
- 相手方の氏名、電話番号、所属する会社の情報(業務中だった場合)、
- 相手方が加入する保険情報(自賠責保険や自動車任意保険など)
- 事故証明が発行されるかどうか
事故現場では警察官が実況見分調書を作成するために同様の内容を確認します。
しかしその調書をすぐに貰うことはできません。
自分自身でスマホや手帳にメモを残すようにしましょう。
また、現場の状況をカメラで「こんなにいらないかも」と思うぐらいに残して置くと、説明するときの助けになります。
会社側が報告書を作る
会社側は事故があったら速やかに管轄の労働基準監督署に届出をする義務があります。
とはいえ、現実には事故後すぐ従業員が出社できず会社側が状況を確認できないこともあるので、焦る必要はありません。
会社に出社したら多くの場合、会社指定の「事故報告書」に記入を求められます。
いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どのようにという形式が一般的です。
その他に事故当時の天候、道路の状況、標識や信号機の有無、交通量など詳細に聞かれることもあるでしょう。
手書きで事故の状況図を描いく場合もあるので、位置関係については事故後に残しておくと慌てずに済みます。
会社は事故報告書を元にして下記の書類を作成します。
- 労働者死病報告書
- 労災保険の請求書
- 第三者行為災害届
会社側の細かい質問に「めんどくさい!」と感じるかもしれませんが、聞いてくるのは書類作成に必要な内容ばかりです。
スムーズに進められるよう協力するようにしましょう。
相手が自賠責保険などに加入している場合は?
事故が起きたときに使えるのは労災保険だけではありません。
相手の自動車の自賠責保険や任意保険を利用することができ、どちらを利用するかは被害者側が決めることができます。
一般的には相手の保険を使用して、その後に労災保険を利用するというパターンとなります。
労災保険と相手の保険は両方とも利用できます。
しかし、給付内容が同じ場合はどちらかしか使うことができません。
補償 | 労災保険 | 自賠責保険・任意保険 |
治療費 | 療養給付 | 治療費 |
休業したら | 休業給付 | 休業損害 |
長期の入院 | 傷病年金 | 休業損害 |
障害・死亡 | 傷病給付・遺族給付 | 逸失利益 |
介護 | 介護給付 | 介護の費用 |
葬儀費用 | 葬祭料 | 葬儀の費用 |
特別支給金 | 特別支給金 | ✕ |
慰謝料 | ✕ | 各種慰謝料 |
たとえば、医療費は労災保険と自賠責保険・任意保険の両方あるので、片方しか使うことはできません。
特別支給金と慰謝料についてはそれぞれにしかないので使うことができます。
労災保険を使うポイント
一般的には自賠責保険・任意保険を優先することが多いですが、自分の過失のほうが大きい場合には過失割合を問われない労災保険が有利になることがあります。
また、相手が自賠責保険のみで任意保険に加入していない場合、障害では上限が120万円と補償が不十分になる可能性がありますが、労災保険には上限金額はありません。
相手方が盗難車だったり、保険が適用されない条件だったりした場合にも労災保険が望ましいでしょう。
自賠責保険・任意保険を使うポイント
相手方の任意保険を使う場合は、示談交渉を行う必要があります。
示談交渉は話し合いでの解決ですが、最初の段階では相手方に有利な条件が提示されることが一般的です。
そのため双方が合意するまでには時間がかかります。
自賠責保険でもプロセスは変わりますが、時間がかかるという点は同じです。
通勤で労災保険が使えないケースとは?
居宅から職場まで合理的な経路で移動した最中に起きた事故でなければ労災保険を使うことはできません。
通勤経路から外れて遊んでいるときは対象外となりますが、コンビニに立ち寄った程度であれば問題ありません。
また、通勤は合理的な経路であれば認められるので、あらかじめ会社に申請している通勤路でなくても認められます。
例えば、交通渋滞や事故規制のために違うルートでも可能です。
まとめ
通勤途中で事故に遭ったら救護と警察への連絡をしましょう。
会社や保険会社からは事故の状況を聞かれるので整理しておけばスムーズです。
労災保険を使うのか、相手方の自賠責保険・任意保険を使うかはケース・バイ・ケース。
気が動転してしまいますが、落ち着いて対応することが一番大切ですよ♪