2020年10月、投資詐欺により多額の借金を負わされた22歳の女性が、自ら命を絶つというニュースがありました。
今年5月に岸田首相が発表した「資産所得倍増プラン」に象徴されるように、今、日本は国を挙げて投資推進モードへ入りつつあります。
確かに資産形成の点では貯蓄より投資の方が効率的です。
しかし、だからといって安易に投資に手を出すと、そこには投資詐欺という罠が待ち受けています。
その罠に嵌れば最悪、冒頭の女性のように自殺にまで追い込まれてしまいます。
そして、この女性を自殺へ追い込んだ詐欺の手法こそ、タイトルに挙げた「ポンジ・スキーム」なのです。
そこで今回は、第二の被害者を出さないためにも、この「ポンジ・スキーム」の手口を丸裸にしていきます。
投資に興味がある方、効率よく資産を増やしたいと思っている方は必見です。
目次
1 「ポンジ・スキーム」の仕組み
投資詐欺のほとんどが、「ポンジ・スキーム」と呼ばれる手法で行われています。
その仕組みは以下の通りです。
- 高配当などを謳い、出資金を集める
- 実際には資産運用をせず、集めた資金の一部を配当金として支払う
- 紹介料を餌に出資者自身に新たな出資者を集めさせる
そうなんです。
仕組みを知れば、こんなことで騙されるのかと思うほど単純です。
しかし、仕組みは単純でもそれが出資者側からは見えないため、騙されてしまうのです。
タネを明かせば単純な手品でも見破れないのは、その手の内が見えないからなのと同じです。
2 若者に目立つ被害
国民生活センターが把握している投資詐欺被害者の中で、29歳以下の割合は、2017年度は33%でしたが、2022年度では58%にまで増加しています。
それは、次のような理由が考えられます。
- お金に関する将来への不安が強い
- 他の世代と比べ、投資への抵抗感が少なく、関心が高い
- 欲しい物が多く、手っ取り早くお金を稼ぎたい気持ちが強い
そうですね。
ドムくんの言うように、➀・➁については、将来のことを考え、今のうちから資産形成をしておこうという、意識の高い人が被害に遭っているということですから、とても残念です。
自殺した女性も、奨学金の支払いに不安を感じていたようです。
3 ポンジ・スキームの手口と見破り方
では、どうしたらポンジ・スキームに引っかからないで済むのか、ここからはその手口と見破り方をお伝えします。
3-1偽りの元本保証
これは、ポンジ・スキームに限った話ではありませんが、投資詐欺は、出資者を安心させるところから始まります。
そのため、ポンジ・スキームではたびたび、元本保証という言葉が使われます。
「元本は保証される」と言って、出資者を安心させるわけです。
しかし、投資である以上、100%元本が保証されるサービスなどありません。
ですから、元本保証という言葉が出てきた時点で詐欺を疑ってください。
3-2異常な高利回り
出資者を安心させたあとに詐欺グループがやることは、「お得感」を出すことです。
出資者の、楽して儲けたい、今やらないと損してしまう、という気持ちに付け込みます。
具体的には月3%以上など、異常に高い利回りを提示してきたりします。
こうした高い利回りを提示された時点で、詐欺を疑いましょう。
3-3最初は配当金が支払われる
これも投資詐欺によくある手口ですが、出資すると最初の何回かは配当金が支払われます。
先程お伝えしたように、ポンジ・スキームの場合、配当金として渡されるお金も、実際には別の出資者の出資金なのですが、もちろん、そんなことは個々の出資者にはわかりません。
そのため、(約束通り運用し、利益が出ているのだ)と信用の度合いを深めてしまうのです。
その通りです。
このようにして、騙されて信用させられ、深みに嵌ってしまうのです。
3-4紹介料制度の罠
ポンジ・スキームの場合、警戒して少額しか出資しなかったとしても、紹介料という別の罠が用意されています。
紹介料とは文字通り、友人などを紹介してくれたら、紹介料を払うというものです。
これならば、出資するリスクを犯さず、お金を得ることができるため、警戒されません。
むしろ、警戒して少額しか出資しなかった人ほど、紹介料で儲けようという考えに陥りがちです。
こうして、出資者自ら、新たな出資者を見つけてきてくれることにより、詐欺グループは労せず出資者を増やすことができます。
そしてこの紹介料制度の最も恐ろしい点は、本来、詐欺の被害者である出資者が、知らぬ間に、詐欺の片棒を担がされてしまう点です。
4 投資詐欺の立件の実態
ドムくんの憤りも最もです。
では、こうした投資詐欺を法律で裁くことはできないのでしょうか。
4-1詐欺罪での立件は難しい
結論から言うと、残念ながらこうした投資詐欺を詐欺罪で立件するのは難しいのが現実です。
その理由は以下の2点です。
①出資金の運用実態を明確にするのが難しいため
投資詐欺などのグループは海外に事業場を設けていることが多いです。
海外だと詐欺グループの摘発自体が困難になる上、出資金の運用実態を明らかにするのも難しくなります。
②騙す意思があったかどうかを証明するのが難しいため
投資詐欺の契約書などには、高利回りが謳われていても、小さく「投資結果には変動があります」などと書かれていることがあります。
こうした文言により、運用が上手くいかなかっただけと、言い逃れをされてしまうことがあります。
もちろん、詐欺グループも捕まればただでは済みません。
詐欺罪での立件が無理でも、金融商品取引法違反などで立件されることが多いです。
ただ、金融商品取引法違反だと、罰金刑だけで済んでしまうこともあります。
自殺した女性を騙した詐欺グループも金融商品取引法違反で立件されました。
4-2遅れる法整備
今の日本では、投資を促す一方で、投資詐欺に遭った際の被害者救済の法整備が追いついていません。
誰もが安心して投資を行える法整備がなされなければ、投資人口は増えていかないでしょう。
現在、こうした状況を変えるため、被害者支援団体などが、被害金の回収制度や厳罰化を国に求めています。
まとめ
今回は投資詐欺、ポンジ・スキームについて解説しました。
資産形成も大事ですが、投資をするにはお金のことだけでなく、リスクとそれに対する自衛手段も知っておかなければなりません。
少しでも不審な点がある場合は、投資する前に周りに相談するようにしましょう。