自転車は車より手軽に乗れ、免許もない分、つい信号無視をしてしまったり、車に乗っている時にはしない交通違反を犯してしまう人もいるのではないでしょうか。
実際、今まではそうした違反を警察に見られても、見逃されるか、せいぜい警告されるだけで済む場合がほとんどでした。
しかし、2022年10月中旬、警視庁は自転車による交通違反の取り締まりを強化し、今までは警告で済ませていた違反についても「赤切符」を交付する方針を表明しました。
ですから、今までのような安易な気持ちで交通違反をすると、ある日突然、赤切符を交付されてしまうかもしれません。
そこで今回は、自転車の取り締まり強化について、具体的にどんな違反が取り締まり強化の対象になったのか、赤切符を交付されるとどうなるのか等について解説します。

目次
1 自転車の交通違反取り締まり強化の背景
自転車の交通違反取り締まり強化の背景には自転車ユーザーの増加と、それに伴う交通違反の増加があります。
自転車ユーザーが増えた理由としては以下の理由が挙げられます。
- 自転車ブームにより、趣味で自転車に乗る人が増えた
- コロナで配送代行が増え、自転車を使う配達員が増えた
- 健康目的や人混みを避けるために自転車通勤をする人が増えた
特に最近はロードバイクのようなスピードが出る自転車に乗る人も増え、危険度も上がっています。
1-1自転車が加害者となる事故も増加している
実際、2021年には以下のような自転車が加害者となる死亡事故も起きています。
- 横断歩道を歩いて渡っていた男性が配達員の自転車にはねられ死亡
- 歩道を歩いていた男性が自転車と衝突、車道に転倒し、車にはねられ死亡
いずれの場合も加害者の自転車は無灯火や横断歩道の近くでも減速しなかった等、交通違反を犯していました。
自転車は車から見ると交通弱者であり、今までは違反も見逃されがちでした。
しかし歩行者に対しては自転車は交通強者であり、加害側になるケースも増えてきました。
そうしたことも取り締まり強化の一因でしょう。
2 取り締まり強化の対象となる違反
警視庁は今回の取り締まり強化で重点的に取り締まる違反として、以下の4つを挙げています。
これらの違反が前章で述べたような重大な交通事故を引き起こすことが多いためです。
- 右側通行
- 歩道通行
- 赤信号無視
- 一時不停止
なお、道路交通法では、上記を含む、以下の15種類が危険行為と定められています。

- 信号無視
- 通行禁止違反
- 歩道用道路における車両の義務違反
- 通行区分違反
- 路側帯通行時の歩行者の通行妨害
- 遮断踏切立ち入り
- 交差点安全進行義務違反等
- 交差点優先車妨害等
- 環状交差点安全進行義務違反等
- 指定場所一時不停止等
- 歩道通行時の通行方法違反
- 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転
- 酒酔い運転
- 安全運転義務違反
- 妨害運転
中でも、⑦については、交差点を左折する際、車道から歩道に乗り上げ、ショートカットをする自転車がいますが、それも違反です。
歩道へ移る際は一度自転車から降りなくてはいけません。
また、⑫についても、趣味性の高い自転車だと、ブレーキやライトなどが販売時には付いていないものもあるので、注意が必要です。

それについては次章で詳しく見ていきましょう。
3 自転車の取り決まりの種類
自転車の交通違反の取り締まりには、「自転車指導警告カード」での取締りと、「違反切符(赤切符)」での取締りの2つがあります。

そうです。
では、それぞれの取り締まりの内容について見ていきましょう。
3-1自転車指導警告カードでの取締り
違反内容が記載された黄色い用紙を渡されます。
これは注意を促すものであり、罰則の対象にはなりません。
今までは違反をして警察に停められても、この“注意”だけで済むことが殆どでした。
3-2違反切符(赤切符)での取り締まり
今後、増えることが予想される違反切符、いわゆる赤切符での取り締まりは罰則の対象となります。
そのため、場合によってはドムくんの言ったように、罰金が科されることもありますし、違反が重なると、自転車運転者講習を受けなくてはならなくなります。
☆ワンポイントワード解説
自転車運転者講習…3年以内に2回以上、赤切符を交付されたり、自転車で交通事故を起こして送致された場合、受講する必要がある

自転車には青切符はありません。
青切符の代わりが自転車指導警告カードと言えるでしょう。
ですから、今回の取り締まり強化を車でたとえるなら、今まで青切符で済んでいたものが、いきなり赤切符を切られるようになる、ということです。
ちなみに、青切符は違反金を支払う必要がありますが、自転車指導警告カードと同じく罰則の対象にはなりません。

4 赤切符による罰金
赤切符による罰金は違反内容にもよりますが、2章で述べた危険行為を例にとると「2万以下の罰金または科料」から「5年以下懲役または100万円以下の罰金」まで様々です。

いいえ。
そういうわけではありません。
赤切符を切られると、罰則の対象にはなりますが、罰金が課されるかどうかは裁判で決まります。

そうです。
赤切符を切られると、結構大事になってしまうのです。
では、赤切符を切られたらどうなるか、その流れを説明しましょう。
5 赤切符を切られたあとの流れ
自転車で赤切符を切られると、基本的にはその他の刑罰と同様に(送検→起訴→裁判)という流れを辿ります。
とはいっても、そこは自転車の赤切符なので、以下のように手続きは簡略化されています。
- 赤切符に記載された日時に簡易裁判所へ出頭します。
- 交通警察官による取り調べを受け、違反内容などの確認をされます。
- 検察官からも取り調べを受けます。違反行為の常習性や、反省度を測る質問がされます。
- 取り調べでの態度や受け答えを考慮し、検察官が起訴か、起訴猶予か、不起訴かを決定します。もし起訴され、有罪となると前科がつくことになります。
- 起訴され、罰金刑が課された場合は、略式命令を受け、罰金を支払います
手続き自体は数時間で終わりますが、場合によると前科がついてしまうこともあります。
そうならないためには、検察官による取り調べの際、常習性がないこと、反省している旨を真摯に伝えましょう。
それでも違反歴が多い場合は、起訴されることもあります。

まとめ
今回は自転車による交通違反の取り締まり強化についてお伝えしました。
今回の強化により、赤切符を切られるケースが増え、赤切符を切られると、最悪、前科がついてしまいます。
そうならないよう、これからは自転車に乗る時も車と同じように交通ルールを遵守するようにしましょう。
