積立NISAやiDeCoを使っての資産運用は少しずつ根付いてきましたよね。
資産運用を調べると「不動産投資をしよう!」という広告を見ることもあるのではないでしょうか?
不動産投資は古い歴史もあり資産運用の王道とも言われています。
しかし、不動産にはわたしたちの感覚とは違う「登記」という独特のルールがあります。
このルールを知らないと大きな損だけが残ってしまうかもしれません。
目次
不動産ってなんだろう?
不動産とは土地と建物のことを言います。
その名の通り、他に動かすことができないものができないという特徴があります。
不動産は木、石、橋など取り除くことができないものも一体のものとして扱われます。
不動産の反対の言葉は動産です。
自動車、テーブル、テレビ、ペン、スマホなどわたし達の日常生活で馴染みがあるものばかりです。
すぐに誰かに譲ったり貸したりすることができますよね!
不動産は動産と比べると多くの場合で取引に大きな金額が必要になるでしょう。
日本では1,000年以上前から土地を巡った争いが続いたように、誰のものであるかを決めるルールが複雑で事例がたくさんあるのです…(汗)
不動産にまつわる不思議なルール
前提:登記とは?
不動産を手に入れたとき「この土地・建物は私のものだ!」という登録を、法務局などの登記所ですること。
①先に登記をした人が所有権を主張できる
あなたがAさんにペンを譲ろうと思ったとしましょう!
Aさんにペンを手渡したときに「譲った」と思うのが自然ですよね。
それを隣で見ていたBさんは「Aさんのものになった」と思い、ペンが自分(Bさん)のものだとは主張しないハズです。
これが動産での所有権の動きです。
何を当たり前のことを…と思いますよね。
ですが、不動産ではまったくルールが異なります。
あなたがAさんに建物を譲りました。
不動産ではBさんは建物が自分のものだということができちゃいます。
例えば、あなたがAさんにもBさんにも売った場合です。
動産であれば実際にものを手にした方が所有権をゲットしますよね?
不動産では先に登記をしたほうが「これは自分のものだ」ということができます。
こんな悪いことする人なんているの?と思うのではないでしょうか?
不動産売買では1つの不動産をたくさんの不動産の仲介業者が取り扱います。
仲介業者同士はお互い何をしているか分かりません。
たまたま話を知った友人にあなたが売ってしまうこともありえます!
登記は絶対ではない
登記がややこしいと言われるのは「登記がなければ所有権も移動してないだろう」と消極的な力しか持っていないことです。
例えば「あなたがAさんに建物を売った」という登記だけあって、実際には所有権が移転しておらずあなたに所有権があるときです。
登記を信じたBさんがAさんから建物を購入しても、Bさんは建物を貰うことはできません…。
これを聞くと頭が混乱してしまいますよね。
そこで動産と不動産で見比べてみましょう!
動産では「〇〇の物だ(所有権)」と「これは〇〇の物に違いない」がセットになっています。
あなたからペンを盗んだBさんが何も知らないCさんにペンを売ってしまっても、Cさんが「ペンはBさんがもともと持っていたものに違いない」と思ったことは保護され、ペンを手に入れることができちゃいます。
あなたは困ってしまいますよね?
不動産では「〇〇の建物だ(所有権)」と「これは〇〇の建物に違いない(登記)」がバラバラです。
このことによって、あなたの知らないうちに登記がされていて、土地や建物を他人に売られてしまっても本当の持ち主を守ることができるのです!
第三者ってなに?
当事者と第三者の違い
登記では第三者という考え方があり、当事者「以外」の人で不動産の登記の不備を主張する正当な利益を持っている人のことをいいます。
例えば、あなたがAさんにもBさんにも建物を売ってしまったとしましょう。
当事者を「あなたとAさん」とするならBさんは第三者です。
また、当事者を「あなたとBさん」とするならAさんは第三者です。
あなた ⇨ Aさん
⇩
Bさん
AさんとBさん同士は見方によってどちらも第三者になるということです。
第三者の関係なら登記を先にした方が建物をゲットできます♪
逆に当事者の関係であれば登記を使うことはありません。
不動産取引をする上で注意しなくてはならないのは第三者に悪意があっても法律で保護されるという点です。
悪意とは「そのことを知っていた」という意味で、わたし達が普段使う「相手を邪魔してやろう」という意味は含まれていません。
例えば、あなたがAさんに建物を売ったことを知っていたBさんがいたとします。
Bさんはあなたから建物を買って登記までしてしまいました。
一般的な感覚からすれば先に買っていたAさんが勝つべきだ!と思いますが、後から現れたBさんが優先されることになります。
サボった人は救ってくれないのが登記
登記しようと思えばできたのにサボった人は不利益を受けてもしかたがないでしょ?という考え方を登記はしています。
登記には売主と買主が共同で行う必要があります。
実際の不動産売買では売買契約を結びます。
その後、建物の引き渡しのときに司法書士など専門家が立ち会い、同日に登記の手続きを行います。
トラブル防止のため、引き渡し後すぐ登記ができるように法務局が開いている平日に行うことがほとんどです!
不法占拠者や背信的悪意者は第三者ではない
第三者は「正当な利益を有する者」なのです。
建物に勝手に住み着いている人は正当ではないので登記しても自分のものだとは言えません。
また、嫌がらせや妨害をして苦しめてやろうとする人を背信的悪意者と呼びますが、これも第三者ではありません。
未成年であっても登記がないと救ってくれない
未成年が親に黙って契約をしてしまっても親は「子どもがしたことなので…」と契約を取消すことができます。
法律上では多くの場合、未成年のしたことと証明できれば元通りにすることができるのです。
ですが登記ではそれができない場合があります…(汗)
未成年が親に黙ってAさんに建物を売却して、Aさんは登記も済ませました。
その後に未成年を理由に契約は取消しになりました。
ここまでなら未成年は建物を取り戻すことができます!
しかしAさんが何も知らないBさんに建物を売ってしまった場合はどうなるでしょうか?
未成年とBさんは登記を先にしたほうが自分のものだと言えます。
未成年はすぐに登記を戻せば守られる状況ですし、何も知らないで建物を買ったBさんも守れるべきですよね。
契約解除でも登記は使われる
これまでの話は二重に不動産を売った場合や、契約そのものが取り消されてしまった場合です。
これらは「民法177条」というルールで、下のパターンが基本です。
あなた ⇨ Aさん
⇩
Bさん
原則の登記のルールは下のようなパターンでは使われていません。
あなた ⇨ Aさん ⇨ Bさん
例えば、あなたからBさんまで不動産の所有権が移動したあとで、あなたとAさんが「やっぱこの取引は止めにしましょう!」となった場合です。
パターンが違うのでBさんは原則通りだと登記をしていても自分のものだと言えないことになってしまいます。
そこで登記を別の法律でも使えるようにしました。
民法545条を当てはめると「あなたとAさんのどちらかが契約解除したら、契約前の状態に戻しましょう。でも、第三者(Bさん)がいたらその人の権利は守らないとダメです」と定められています。
この法律での第三者を「先に登記した第三者」ということにしたのです。
登記があればBさんの権利は守られることになりますよね。
まとめ
不動産はわたし達の価値観と違うルールなので分かりにくいと感じるのではないでしょうか?
これは正直者が馬鹿を見ないように試行錯誤された結果でもあります。
一方ですぐに登記をしなかった方は助けないという形で反映されている面もあります(汗)
不動産投資も積立NISAやiDeCoのように、法律や仕組みをしっかり学んでいないと大きな損やトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
1つ1つ学んでステップアップしていきましょう!